2007年09月07日

綴方教室

 京都文化博物館まで、高峰秀子主演、山本嘉次郎監督の『綴方教室』(1938年、東宝)を観に行って来た。

 『綴方教室』は、豊田正子という少女の同名の綴り方(生活作文とでも言うべきか)集をヤマカジさんこと山本嘉次郎監督が映画化した作品で、黒澤明も製作主任(助監督)としてスタッフに名を連ねている。

 作品の根本にあるものは、まさしく貧乏、貧困、貧しさと、そうした中での生活の厳しさ以外の何ものでもないが、それがじめじめうじうじと救いなく描かれるのではなく、時にユーモアも交えながら、暖かい視線でもって綴られているため、基本的には好感の持てる作品に仕上がっていると思う。
(正面きっての「抗議」がない点に、左翼弾圧後の「時代的制約」を感じはしたが)

 また、学級で席を立つ時、一人の少女の椅子が後ろに倒れるなど、山本監督らしい細部にまで目配せのきいた演出も印象に残った。
(そうした「細かさ」は、明らかに黒澤明に受け継がれている。そして、この『綴方教室』から、後年の『どですかでん』を思い起こしたりもした)

 役者陣では、主人公の少女を演じた高峰秀子をまずもって挙げるべきだろう。
 その圧倒的な存在感には、舌を巻く他ない。
 し、単にかわいいというより、きれいだ。
(貧乏生活を嫌がる姿が、成瀬巳喜男監督の『稲妻』の彼女とオーバーラップしたりもした)

 他に、徳川夢声、清川虹子、滝沢修、赤木蘭子、三島雅夫(「たんばさん」ならぬ丹野さん*)、本間教子(後の文子。『羅生門』を彷佛とさせる「エキセントリック」な演技を披露している)も出演していた。

 いずれにしても、観て損のない一本だった。


 *「たんばさん」が、山本周五郎の原作『季節のない街』にもある名前ということは、重々承知しておりますです。
posted by figarok492na at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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