2007年07月04日

狂った一頁

 6月30日、京都文化博物館まで、衣笠貞之助監督の『狂った一頁』(1926年、新感覚派映画連盟)を観に行って来た。

 『狂った一頁』は、ずいぶん前に教育テレビか何かで一部に接したことがあって、「なんじゃこの前衛的な作品は!」と驚嘆した記憶が残っていたのだけれど、今回全編を観てみて、その印象の大半は確かに当を得たものであったように思った。

 と、言うのも、同時代のドイツ表現主義などを想起させるような、当時としては斬新な映画的技法・手法がこれでもかこれでもかと盛り込まれた、やりたいほうだいの作品に仕上げられているからである。
(タイトル通り、狂った、言い換えれば、沙汰の限りを尽くした映像と展開には、少し気分が悪くなったほどだ。例えば、増村保造監督の『巨人と玩具』における「狂的」な部分が、如何にソフィスティケートされたものかがわかる)

 ただ一方で、その物語は、癲狂院(精神病院)を舞台にしたというところに「新しさ」を感じるものの(「狂気」の人間を物語に取り込むこと自体は古典的なやり口とはいえ)、新派臭の強いわかりやすいものではなかったろうか。
 その意味で、井上正夫の演技は見事に決まっていた。

 あと、後年「あのねのオッサン」として一世を風靡する高勢実乗が高勢実名で出演していて、基本的にはまじめな役柄であるにもかかわらず、どう考えても「やってる」ようにしか見えなかったのが、個人的には面白かった。

 なお、今回の上映は、衣笠監督自身の監修による「サウンド版」によるものだったのだけれど、ううん、これはどうなんだろう。
 「箱根の山は天下の険」と、キチガイじみた軍楽調の『箱根八里』が繰り鳴らされる「福引き進軍」「福引き妄想」あたりは大いに愉しかったとはいえ、あとは少々うっとうしいだけだったような…。
posted by figarok492na at 14:48| Comment(3) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご参照されたい。
Posted by 橿原通信 at 2007年12月11日 19:07
 コメント、ありがとうございました。

 橿原賢者様のブログ、橿原通信拝見させていただきました。
(こちらのパソコンではどうしても文字化けしてしまうため、コメントすることができず、申し訳ありません)

 巡り合わせ、というものなのでしょうか。
 フィルムにまつわる話に、感嘆しました。
(『十字路』は未見です。一度観たいと思っています)
Posted by figaro at 2007年12月11日 22:01
京都文化博物館のフィルムと、小生のものとは同じオリジナルによると思いますが、光学式音声が付いているフィルムである点が謎です。大正13年制作時は無声映画であり、新宿武蔵野館という当時の洋画専門館で初上映の折、弁士を買って出たのが、人気絶頂だった徳川夢声だったという伝承があります。
従って、BGMが付いたのは、1971年発見時以後、衣笠監督が自らBGMを作ったと考えるべきなのでしょう。
「昭和21年撮影カラー映像・大阪大空襲の記録」など、他の稀少映像もあり、数人の上映会でも出かける用意はあります。
Posted by 橿原賢者 at 2008年01月12日 02:45
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