2007年01月19日

『犬神家の一族』と『細雪』

 昨日の日記で簡単に触れたことだが、谷崎潤一郎の『細雪』を読んでいて、もしかしたら横溝正史は、『犬神家の一族』を執筆するに際し、意識無意識はひとまず置くとして、『細雪』の影響を受けたのではないかと強く感じた。
 少なくとも、谷崎潤一郎の作品を愛好した横溝正史*が、その谷崎の傑作『細雪』に全く目を通していなかったとは、僕にはとうてい思えない。
(なお、『細雪』全巻の刊行は、1947年であり、『犬神家の一族』は、1950年から51年にかけて執筆されている)

 それでは、なぜ僕がそのように感じ思ったかといえば、二つの作品にいくつかの共通点があるからである。
 まず、『犬神家の一族』で犬神佐武の生首が置かれる菊人形は、いわゆる「鬼一法眼」の三段目、菊畑の場を模したものだったが、『細雪』で雪子とその結婚相手となる御牧が歌舞伎座で観劇するのが、ちょうどこの菊畑の場面なのだ。
 また、『犬神家の一族』で効果的に利用される琴が、『細雪』でも度々登場するし、『犬神家の一族』のキーパーソンの一人である「松子」という名前は、谷崎潤一郎夫人の名前ともつながる。
 さらに言うならば、「姉妹」という設定や、日本的な「家」制度が重要なモティーフになっているという点でも、『犬神家の一族』と『細雪』は、共通しているのではないだろうか。

 あまりに両作品を結び付けると、それこそ牽強付会のそしりは免れないかもしれないけれど、僕は僕自身の考察が、あながち見当違いではないとも考える。
 適うことならば、識者事情通の方々のご意見ご教示をいただきたいものだ。

 *横溝正史が谷崎作品を愛好し、「意識してか無意識にかその着想を借り来ることがしばしばである」と江戸川乱歩が指摘していることを、横溝の『鬼火』<角川文庫>の解説中で、中島河太郎は記している。
(第2CLACLA日記にも、ほぼ同様の投稿を行いました)
posted by figarok492na at 16:13| Comment(0) | TrackBack(1) | 雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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