2006年12月01日

兄とその妹

 京都文化博物館で、島津保次郎監督の『兄とその妹』(1939年、松竹大船)を観る。

 後半、佐分利信演じる主人公に「災難」(男の嫉妬による)が降りかかってくるとはいえ、基本的には大きな事件が起こる訳ではなく、主人公とその妻(三宅邦子)、妹(桑野通子。そのファッションの先鋭的なこと! それもこの作品の観どころである)の親密な生活が、時に主人公や妹の職場などをからめながら淡々と描かれた作品なのだけれど、これが実に面白い。
 登場人物間の微妙な関係の在り方がしっかりととらえられていることがまず魅力的だし、それがこれ見よがしでないのもなおよい。
 また、戦前の都市における生活=モダニズムを識ることができる点も、非常に興味深い。
 加えて、上記の三人の他に、河村黎吉、笠智衆、上原謙、坂本武、菅井一郎、水島亮太郎、奈良真養、小林十九二らが物語に彩りを加えている。
 ラストで、主人公たちが飛行機に乗って満州に旅立つシーンや、結婚こそ女性の云々かんぬんという台詞には時代を感じずにはいられないが、いわゆる「松竹大船調」の最も優れた典型の一つと評することができるのではないかとも、僕は思う。
 多くの方々にお薦めしたい一本だ。

 なお、この作品に関しては、小林信彦の『噂の映画「兄とその妹」』(『コラムは誘う』<新潮文庫>所収)が詳しい。

 それと、『兄とその妹』は、1956年に東宝がリメイクしている。
 松林宗恵監督、池部良(主人公)、原節子(妻)、司葉子(妹)他の出演によるもので、こちらもできることなら観てみたい。
posted by figarok492na at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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