2006年10月26日

雁の寺

 予定通り、京都文化博物館まで川島雄三監督の『雁の寺』(1962年、大映京都)を観に行って来た。

 『雁の寺』は、水上勉原作の同名の小説を映画化したもので、京都のとある禅寺で繰り広げられる陰鬱な「愛」「欲」の世界を、川島監督らしく、時にとぼけて乾いたユーモアをまぶしながら、ねっとり重たく描き上げた作品である。
 当然、水上勉自身の体験が色濃く反映した内容である訳だが、例えば殿山泰司の『三文役者あなあきい伝』等で監督の「出自」や「人生」を知っている分、どうして川島雄三という人間がこの作品をとり上げたかについても、強く考えざるをえなかった。
(幼年時代の主人公=少年僧が、若狭の「乞食谷」を離れるシーンでは特に)
 母性愛、禅僧の腐敗、さらには差別の問題と、語りたい部分は多々あるのだが、ここでそれについてくどくどくどくどと書き連ねるのも無粋なだけなので、まずは作品のほうをぜひぜひご覧いただきたい、と言う他ない。
 シリアスな場面に限らず、後半の葬儀から出棺あたりのユーモアとスリルの「掛け合い」も、なかなかの観物なはずだから。

 役者陣では、少年僧を演じた高見国一と、ファンムファタル的存在感を見せつけた若尾文子を一番に挙げるべきだろうが、他にも、生臭坊主ぶりを見事に演じた三島雅夫、主人公を心にかけながら結局彼を救うことのできない木村功、ハイカラ坊主ぶりが笑いを誘う山茶花究、中村雁治郎、西村晃、伊達三郎、といった達者な顔触れが揃っている。
(あと、小沢昭一はどこに出てくるのだろうと待っていたら、最後にきちんと「やって」いた)
 また、村井博による撮影、西岡善信による美術も流石だった。

 一見、どころか再見の価値ある作品だと、僕は思う。

 ところで、これは余談だが、いたるところ「引用」だらけで知られる伊丹十三の『お葬式』の中で、もっとも印象に残るあるシーンは、この『雁の寺』に影響を受けたものではないだろうか?
 そう言えば、菅井きんは『雁の寺』にも出演していたのだし。
posted by figarok492na at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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