2006年09月03日

丹下左膳余話 百万両の壷

 京都文化博物館の映像ホールまで、山中貞雄監督の『丹下左膳余話 百万両の壷』(1935年、日活太秦)を観に行ってきた。
 今月の京都文化博物館の映像ホールでは、山中貞雄の特集が組まれていて、この『丹下左膳余話 百万両の壷』の他、『河内山宗春』と『人情紙風船』が上映される予定になっている。
(他に、山中貞雄が脚色に加わった、滝沢英輔監督の『戦国群盗伝』や、山中貞雄原案による、萩原遼監督の『その前夜』も上映される予定である。山中は、1938年に戦病死した戦前の日本を代表する映画監督の一人だが、先述した3本の作品以外は、フィルムが残存していない)

 『丹下左膳余話 百万両の壷』は、林不忘原作のおなじみ丹下左膳を主人公とした作品だが、原作が、百万両のありかを記した「こけ猿の壷」を巡って、左膳、柳生、うんたらかんたらと入り乱れて大騒ぎになるのに対し、こちらは、いたって「平和」なストーリー展開で、かたや丹下左膳と櫛巻お藤(新橋喜代三)がちょび安相手に「子育てごっこ」に熱を上げれば、かたや柳生源三郎は奥方(花井蘭子)に頭の上がらぬだめ亭主ぶりと、まさしく喜劇に徹したつくりになっている。

 すだれ雨だれの画面に加え、ぶつぶつぶつぶつとカットがあったり、音質が悪かったり(もちろん、大河内伝次郎の「例の」エロキューションのせいだけではない)で、はっきり言って、見やすい状態では毛頭なかったが、非常によくできた内容だけあって、全く飽きることなく、最後まで愉しむことが当方にはできた。
(この作品が、アメリカ映画の『歓呼の涯』を下敷きにしていることは、映画通の間では有名な話だけれど、他にも、スラプスティックコメディーやスクリューボールコメディーなどがしっかり「咀嚼」されていることが、観ていてよくわかった。特に、省略を利用した「笑い」は見事という他ないし、ちょび安へ父親の死を伝えるあたりの見せ方も素晴らしい)

 役者陣では、何と言ってもセルフパロディをやり切った丹下左膳の大河内伝次郎だが、柳生源三郎を演じた沢村国太郎の演技も実に面白かった。
(血は争えないというが、奥方相手に「臭い芝居」をやってみせるところなど、息子の長門裕之や津川雅彦そっくりだ)
 他に、後年「あのね、おっさん…」で一世を風靡する高勢実乗なども印象に残った。

 これは、観て損のない、ではなく、邦画ファンなら必見の一作だ。

 なお、『丹下左膳余話 百万両の壷』に関しては、筒井康隆の『不良少年の映画史(全)』<文春文庫>にも詳しい記述が為されているので、興味がおありの方はご一読のほどを。
 また、熱狂的な映画ファンの筒井さんは、フィルムが現存しない山中貞雄監督の『街の入墨者』(1935年、日活太秦)を扱った、『CINEMAレベル9』という作品もものしている。
(『夜のコント・冬のコント』<新潮文庫>所収)
posted by figarok492na at 21:11| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「あのね、おっさん・・・」と聞くと、
TVアニメの「ハックション大魔王」を連想します。
高瀬みのる?名前は聞いたような気はしますが。
Posted by kosutalika at 2006年09月03日 21:25
 こんばんは。

 >ハクション大魔王
 ああ、そう言えば、そんな気も。
Posted by figaro at 2006年09月04日 01:07
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