2006年06月26日

めし

 予定通り、九条大宮のみなみ会館まで、成瀬巳喜男監督の『めし』(1951年・東宝作品)を観に行って来た。

 じわじわじわじわぐいぐいぐいぐいひき込まれる、そんな作品だと思う。

 かつて親の反対を押し切って結婚し、今は大阪で「豊かではない」生活を送っている夫妻(原節子と上原謙)のもとに、夫の姪(島崎雪子)が家出をしてやって来る。
 姪は夫に恋心に似た感情を抱いているようで、夫のほうもまんざらではない様子である。
 そんな夫と姪のあれこれに、たまりにたまった妻の感情が噴き出して…。
 といった物語の展開だが、まずもって妻を演じる原節子が素晴らしい。
 やけにバタ臭くって、肉感的に過ぎる感じがしないでもないが、日々の生活による疲弊や夫と姪、さらには自分の従兄弟(二本柳寛)=人間関係のシンメトリー!、に対する複雑な感情に揺れ動く妻の姿を、原節子は見事に演じ切っていると思う。
 特に、『めし』というタイトルにも重なる、米をとぐシーンが、僕には強く印象に残った。
(くどくどと説明はしないが、この作品では、他にもめし=米に関する印象的な場面がいくつかある)
 もちろん、原節子をこういう風に演出してみせた、成瀬巳喜男の映画監督としての手腕も忘れてはなるまい。
 流石は成瀬巳喜男、と舌を巻くばかりだ。

 また、この『めし』が、戦争の影と戦後の復興、不況、そして当時の大阪の賑わい(観光バスや高級キャバレーのショーを描写したシーンまである)などを巧みに活写した作品であることも指摘しておかなければならないだろう。

 役者陣では他に、ぱっとしないし、原節子ならずとも時にいーっとなってしまうが、どこかにくめない夫の上原謙、原節子の母親をきっちり演じている杉村春子、名おばちゃんおばあちゃん役者の浦辺粂子、コメディリリーフを割り当てられた「いかれポンチ」大泉滉、進藤英太郎、小林桂樹、中北千枝子、花井蘭子、杉葉子、長岡輝子、若き日の風見章子、田中春男、山村聡と、おなじみの顔触れが揃っていて、とても嬉しい。

 ところで、この作品は原節子が元の鞘におさまる形でラストを迎えるのだが、果たして林芙美子の原作(遺作で未完)はどうなっているのだろう。
 あの『放浪記』の作者が、そんなシンプルな「まとめ方」をしているのだろうか。
 一度、確かめてみたいものだ。
(付け加えておくが、映画は、大阪へ帰る車中の原節子と上原謙のシーンでは終わらない。再び夫妻が暮すことになる、大阪の「市井」のシーンで終わるのだ。僕にはその一コマが、「重く」感じられて仕方がなかった)

 いずれにしても、傑作。
 これは、観よ!
posted by figarok492na at 20:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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