2006年05月21日

男はつらいよ

 京都文化博物館で、山田洋次監督の『男はつらいよ』(1969年・松竹大船作品)を観る。

 渥美清扮する、寅さんこと車寅次郎を主人公とするおなじみのシリーズの第一作で、今さらとやかくあら筋を述べる必要もあるまい。
 また、見巧者の評としては、小林信彦の『おかしな男 渥美清』<新潮文庫>中の20『「男はつらいよ」第一作』があって、それを読んでいただければ、この作品の魅力を充分に納得することができると思う。
 小林さんがすでに記しているように、渥美清の声の良さ、口跡の良さ、切れの良さには惚れ惚れとするし(仁義を切るシーンや「啖呵売」は、やはり観物聴き物だ)、森川信の演技の良さも印象的だ。
 そして、さくらと博の披露宴における志村喬(博の父親)のスピーチのシーンには、べただとわかっているのに、涙が流れてきた。
(今年は『七人の侍』も観ているが、やっぱり志村喬の演技には圧倒される。こういう人の演技を、こうやって観ることのできる幸せを噛み締める)
 他に、笠智衆のとぼけた演技を含めて、いわゆる松竹大船調の枠の中にあるものとはいえ、ツボを押さえた笑いや、シンプルでスピーディーな物語の展開には、感嘆せざるをえなかった。

 で、ここからは、個人的なことを少し。
 画面というか画像が、明らかにプログラム・ピクチュアーっぽかったこと、倍賞千恵子が愛らしかったこと、前田吟の演技がやけに「新劇」っぽかったこと、佐藤蛾次郎や津坂匡章(現秋野太作)があまりにも若々しかったこと、渥美清の付き人だった石井愃一が出演していたこと、広川太一郎がさくらのお見合いの相手を演じていたこと(しかも台詞がない! あの広川太一郎なのに)などが、当方には面白くて仕方がなかった。

 いずれにしても、観に行って本当によかった。
 これこそ「喜劇」だと痛感する。


 ところで、車寅次郎の車は、たぶん江戸時代の非人頭(支配)車善七によるものだろうが、寅次郎のほうは、喜劇映画の監督斎藤寅次郎によるものではないかと勝手に考えたりしている。


 追記:笠智衆と光本幸子が奈良を旅するシーンは、もしかしたら小津安二郎を意識しているのかもしれない。
posted by figarok492na at 19:50| Comment(2) | TrackBack(1) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
寅さんを劇場で観られるなんて、素敵ですね。
俺はまだ第一作を観たことがないのです。
だからせめてDVDで借りて、観たいと思います。
広川太一郎が出ているなんて!。
しかも台詞なし!。
広川太一郎なのに!w。

この前最近作られた香港映画で、広川さんの吹き返したのを観たのですが、あいかわらずで可笑しかったです。
台詞がもう口にまったく合ってないw。
広川さんのアドリブについていく他の役者さんたちの役者魂にも敬服しました。
Posted by リサガス at 2006年05月21日 21:38
 こんばんは。
 コメント、ありがとうございます。

 劇場といっても、小さなホールですが、でもある程度大きなスクリーンで観ることができたのはよかったです。
 でも、DVDでも充分楽しむことはできると思いますよ。
 ぜひ!

 広川太一郎は、彼の顔を知っていても、すぐにはわからないかもしれません。
 何せ、当方が生まれた年の映画なので…。

 そうそう、広川さんのアドリブは凄いですよね。
 特に、香港映画で聴かせる彼の吹き替えは神業です。
(確かに、それについていくのもそうですが)
Posted by figaro at 2006年05月21日 23:13
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