2006年02月25日

にっぽん泥棒物語

 京都文化博物館で、山本薩夫監督の『にっぽん泥棒物語』を観て来た。

 『にっぽん泥棒物語』は、潮健児の映画人生を描いた唐沢俊一編著の『星を喰った男』<ハヤカワ文庫>で一文が割かれていたこともあって、前々から気になっていた作品である。
(独立プロではなく、東映東京作品のため、若き日の千葉真一や室田日出男の他、先述の潮健児、吉田義夫、山本麟一、杉狂児・義一父子、今井健二らが出演している)

 三國連太郎演じる破蔵師=土蔵破りの林田義助が、偶然杉山事件(松川事件*)の「真相」を知り、葛藤の末、法廷で真実を語るという、基本的には「政治性」の強い作品であるが、そこここに仕掛けられた「ユーモア」や「ギャグ」、そして、役者陣のこってりたっぷりとした演技もあって、「笑い」という点でも楽しめる作品になっているのではないか。
 特に、そもそも泥棒だった義助が地方の名士となって一席ぶつところや、最後の法廷での皮肉たっぷりな一幕など、なかなかの見物だと思う。
(もちろん、この作品が人の心の変化を描いた「ドラマ」となっていることは、言うまでもあるまい)
 ところどころ、ここは削ってもいいと感じたり、これは古すぎると感じた場面もなくはなかったが、山本薩夫の「伝えたい」意欲と「楽しませる」術が巧く合致していることは明らかだろう。

 役者陣では、何と言っても三國連太郎だが、「敵」の警部補を演じた伊藤雄之助(インパクトあるわあ!!)や、義助の母親を演じた北林谷栄、今井正の秘蔵っ子江原真二郎、若き日の佐久間良子、市原悦子、緑魔子、鈴木瑞穂、加藤武と名人上手が揃っていて、大いに満足ができた。
(個人的には、加藤嘉、永井智雄の演技を観ることができて嬉しかった)

 観に行って、得るところは大だった。


 *松川事件=1949年8月、福島県金谷川〜松川間で国鉄の旅客列車が何者かによって脱線顛覆させられた事件で、戦後占領期を代表する「冤罪・陰謀事件」の一つである。
 東芝松川労組の幹部(多くは共産党員)が実行犯として逮捕され、第1審、第2審では死刑を含む有罪判決を受けたものの、ようやく最高裁で無罪が確定した。
 労組や共産党以外に、文化人や知識人によっても「救援活動」が活発に行なわれ、山本薩夫も『松川事件』を撮影した。
(『にっぽん泥棒物語』は、『松川事件』撮影中に山本薩夫が聞き知ったエピソードを元にした作品である)
posted by figarok492na at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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