2006年02月05日

浮草日記

 予定通り、京都文化博物館の映像ホールで山本薩夫監督の『市川馬五郎一座顛末記 浮草日記』(1955年、山本プロ=俳優座作品。以下、浮草日記と略)を観てきた。
(今月、京都文化博物館の映像ホールでは、山本薩夫の特集が組まれている)

 『浮草日記』は、真山美保(青果の娘)の戯曲『市川馬五郎顛末記』を映画化したもので、どさまわりの市川馬五郎一座がひょんなことから炭鉱町で組合のストライキと遭遇し、反発と相互理解の末、彼彼女ら労働者とともに芝居を上演することによって、階級的立場に目覚めていくという、いかにもな内容の作品である。
 ただ、いかにもな内容ではある(し、ご都合主義的な展開でもある)けれど、未だに物事の本質をついている作品だとも思う。
(なぜなら、表層は大きく変化したとはいえ、根本的なあれやこれやは、この作品が創られてから50年経っても全然変わってはいないからだ)
 また、東野英治郎演じる市川馬五郎が、大勢の労働者から歓声を受けて、こんなにお客さんとの間を身近に感じた芝居は今までやったことはなかった、と心の底から口にする場面などには、「わかってはいても」、胸にぐっとくるものがあった。
(もちろん、ここで描かれていること全てが、即現在の「闘争」に通用するものではないことも、忘れてはなるまいが)

 市川馬五郎一座を苦しめる悪徳興行主の小澤栄太郎(当時は栄。ほんま、にくたらしいやっちゃ!)や、情けない座員の江幡高志をはじめ、松本克平さん、津島恵子、菅原謙二、花澤徳衛、高橋昌也(色悪)、東山千栄子の他、浜田寅彦、中谷一郎、仲代達矢、岩崎加音子ら俳優座の面々が出演していて嬉しい。
(若き日の小沢昭一や井上昭文の出演も嬉しい)

 『七人の侍』のような大傑作とは言えまいが、当時のどさまわりの一座の雰囲気を識る意味も含めて、今も一見の価値のある作品だと僕は思った。

 なお、『市川馬五郎顛末記』と真山美保、彼女の劇団新制作座などについては、先日読了した矢野誠一の『酒場の藝人』中の、「『市川馬五郎顛末記』の頃」が詳しい。
 興味がおありの方は、ご一読のほどを。
posted by figarok492na at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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