2005年06月02日

山本直純よ永遠なれ

 朝日新聞朝刊によると、「山本直純の業績を集大成したCD選集」『人生即交響楽』が発売されたとのことだ。
 日本音声保存からの発売で、8枚組、1万6800円とある。
 山本直純は、クラシック音楽の作曲家、指揮者として活動した他、映画『男はつらいよ』やNHK大河ドラマ『武田信玄』の音楽、森永エールチョコレートをはじめとしたCMソング、クレイジーキャッツの歌った『学生節』、の作曲などでも知られる、日本のカルチャー、サブカルチャー双方の歴史に大きな足跡を残した人物の一人であった。
 そんなナオズミさんの仕事が、こうした形で残されることは、僕のような日本のオーケストラ史を研究してきた人間にとっても喜ばしいかぎりではあるのだが、いかんせん、8枚組、1万6800円という内容では、ちょっとばかり手が出しにくい。
 ナクソス・レーベルの日本作曲家選輯ではないけれど、1枚のCDに山本直純のエッセンスを集めるということはできないものだろうか?
 多くの人たちが手にしやすい形で、ナオズミさんの業績を伝える作業も、当然必要とされているように、僕には思えてならないのだが。

 ところで、この朝日新聞の記事には、「ベートーヴェン作品を元にした『ピアノ狂騒曲ヘンペラー』といった、大まじめに作った『変曲』の新録音も含まれいる」ともあるが、これには少し解説が必要だろう。
 ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝(エンペラー)」をもじった『ヘンペラー』や、同じくベ−ト−ヴェンの交響曲第5番「運命」をもじった交響曲「宿命」(映画『砂の器』のそれとは、全く別物)といった、一連の「変曲」は、旧日本フィルが1967年から5年間にわたって開催した『ウィット・コンサート』*の中で演奏された作品なのだ。
 確かに大まじめには作っただろうが、山本直純が物好きで得手勝手に作曲した作品ではないということは、やはり付け加えておかねばなるまい。
 なお、こうした「変曲」の数々は、『山本直純フォーエヴァー/歴史的パロディ・コンサート』のタイトルで、日本コロムビアから2枚組のCDとして発売されている。
 各「変曲」とも、なかなか凝った作品になっているので、クラシック音楽通の方たちにも納得いただけるのではないか。
(*『ウィット・コンサート』は、イギリスの冗談音楽祭『ホフナング音楽祭』に影響を受けたとおぼしい)
posted by figarok492na at 13:09| Comment(2) | TrackBack(0) | クラシック豆情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして、とても興味深い山本直純さん情報!
このCDは購入の価値がとてもあると思います!
だって、最高じゃないですか!
「運命」→「宿命」「協奏曲」→「狂騒曲」だなんて。
こういうシャレっけのあるセンス大好きです。
それにしても、朝日新聞のこの記事を書いた方は
分かっておられませんねぇ…。
figarok492naさんの補足があるからこそ面白い…。
あぁ、聞いてみたい。実は演奏を本職としている私。
聞かなきゃいけません。勝手に興奮してコメントを
書いてますが、良い情報をありがとうございます。
Posted by おぎの家 at 2005年06月02日 13:45
 初めまして。
 おぎの家さんのお役に立てて、まずは何よりです。
 実は、山本直純(ナオズミさん)のCDに関しては、別のところで書いたことがあり、今回も即アップしてしまいました。

 >このCDは購入の価値が…
 そうなんですよね。
 個人的にはぜひとも手にしたいCDなのですが。
(ナオズミさんに関する証言などもふんだんに含まれているそうです)

 >シャレっけのあるセンス
 確かに、そうですよね。
 本文に記載したコロムビアのCDを聴きましたが、音楽的なセンスも相当のものだと思いました。
(古今亭志ん朝の語りによる、プロコフィエフの『ピーターと狼』も一聴の価値があると思います)

 こちらこそ、コメント本当にありがとうございました。
Posted by figaro at 2005年06月02日 16:17
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