2018年12月17日

第56回座錦湯

☆第56回座錦湯

 出演:月亭遊真さん、桂三幸さん、桂白鹿さん、月亭希遊さん
(2018年12月17日20時開演/錦湯)


 日中は少し気温が上がったものの、朝晩の冷え込みがめっきり厳しくなった京この頃。
 今夜も錦湯さんでは座錦湯が開催された。
 諸々あって、三週間ぶりに顔を出す今回は、月亭遊真さんの差配で、桂白鹿さん、月亭希遊さん、そしてスーパーゲスト(!)の桂三幸さんが出演した。

 まずは、遊真さん、白鹿さん、希遊さんのお三人のトークから。
 今夜が錦湯さん初出演となる希遊さんは、月亭遊方さんのお弟子さんということで、遊真さんにとっては弟弟子にあたる。
 入門一年目で修業中の身ということで、遊真さんはもちろんのこと、白鹿さんもそこに加わって弟子修業の話やら、月亭一門では行われていない事始めについてなど語り盛り上げる。

 で、頃合いのよいところで、希遊さんが高座へ。
 古典の『鉄砲勇助』をかける。
 上述の如く、一年目ということで初々しさを強く感じる丁寧な口演。
 ちょっと高めの張りのある声質や語り口は上方落語むきだと思うので、これからの研鑽がとても愉しみだ。

 続いては、白鹿さん。
 冒頭のトークの繋がりで、今年自分にも弟弟子ができたんだけれど…とマクラで語り笑いを誘う。
 本題は覚えたてという『転失気』。
 登場人物のキャラクター分けがしっかりしている上に、メリハリがよく効いた話し運びで耳にすっと入ってくる高座だった。

 三席目は遊真さんで、これまたおなじみの古典『真田小僧』を演じた。
 ただし、錦湯さんでは父親が子供にお金をとられたところに母親が帰って来るあたりでサゲる場合が多いが、遊真さんは真田小僧という題名のもととなる講釈の部分をきっちり演じ最後まで通した。
 錦湯さんで遊真さんを聴き始めて、もう三年以上になるか。
 子供の頃から大柄だったとマクラで遊真さんが語っていて、確かに初めての高座の際にもその柄の大きさは感じたのだけれど、この間の研鑽が物を言うというのか、落語家としての柄も一歩一歩大きくなっているように僕には思える。
 さらに長めのネタに接していく日が待ち遠しい。

 トリは、三幸さん。
 今夜もネオはめ物(スマホ・Bluetooth・ボウズのスピーカー)を駆使して、新作のハイブリッド落語を披露した。
 作詞に悩むミュージシャン、実は友人の画家から飼い猫を預かっていたのだが…。
 という猫が大活躍するお話で、猫相手にミュージシャン(三幸さん)が四苦八苦する仕草、中でも腕の動かしかたなど実にキュート。
 笑いながら、ちょとほっこりした。

 と、今夜も盛りだくさんの座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!

 そして、皆さんも毎週月曜夜は錦湯さんにぜひ!!
(来週24日、再来週31日はお休みの予定ですので、お間違いなきように!!)
posted by figarok492na at 23:36| Comment(0) | 落語・ネオ落語記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

三遊亭小圓朝が亡くなった 午前中、図書館へ(早めのCLACLA)

 青空は見えつつも、どんよりとしたお天気の一日。
 雨も降る。

 気温は少し上昇したか。
 それでも、皆さんくれぐれもご自愛くださいね。
 風邪など召しませんように。


 体調、今一つ。
 両耳の不調も続く。


 落語家の四代目三遊亭小圓朝が亡くなった。49歳。
 父親は、三代目三遊亭圓之助。
 同じ年の同じ月の生まれということもあって、非常に辛い。
 深く、深く、深く黙禱。


 安倍内閣が今日も続く。
 厚顔無恥で因循姑息な無理無体無法無謀が今日も押し進められる。
 いつまで続く泥濘ぞ。
 本当に救いがたい状況だ。


 記憶力、読解力、判断力を一層鍛えていかなければ。
 そして、目くらましの八百長猿芝居には絶対に騙されまい。


 昨夜、山本直純指揮旧日本フィルが演奏した『山本直純フォエヴァー』<日本コロムビア>から古今亭志ん朝の語りによるプロコフィエフの『ピーターと狼』、MBSラジオの北野誠らによる怪談を聴いたりしながら作業を進めたのち、2時20分過ぎに寝床に就く。
 怪談話を寝る前に耳にしたせいか、なんとも奇妙奇怪な夢を見てしまった。


 9時台に起きる。

 『山本直純フォエヴァー』からヴァイオリン狂騒曲「迷混」を聴いたりしながら、仕事関係の作業を進めたり、『ほそゆき』の十を書き進めたりする。


 片山杜秀の『音楽放浪記 日本之巻』<ちくま文庫>を読了する。
 ああ、面白かった!


 11時半少し前に外出し、下京図書館へ。
 『山本直純フォエヴァー』、園田高弘と近衛秀麿指揮旧日本フィルが演奏したベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」<デンオン>、水道橋博士の『藝人春秋2』の上下<文藝春秋>、馬部隆弘の『戦国期細川権力の研究』<吉川弘文館>、石田香織の『きょうの日は、さようなら』<河出書房新社>、吉田篤弘の『おやすみ、東京』<角川春樹事務所>を返却し、予約しておいた柴田克彦の『山本直純と小澤征爾』<朝日新書>、宝田明の『銀幕に愛をこめて』<筑摩書房>、浅田次郎の『天子蒙塵 四巻』<講談社>、朝吹真理子の『TIMELESS』<新潮社>、保坂和志の『ハレルヤ』<同>、トゥガン・ソヒエフ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団が演奏したプロコフィエフの『キージェ中尉』組曲、古典交響曲&交響曲第7番<SONY>、マルク・ミンコフスキ指揮ルーヴル宮音楽隊他が演奏したマルカントワーヌ・シャルパンティエのテ・デウム他<ARCHIV>を新たに借りる。


 午後、ABCラジオの『上沼恵美子のこころ晴天』や『武田和歌子のぴたっと。』、ソヒエフ指揮によるプロコフィエフのアルバム、YouTubeでジョヴァンニ・アントニーニ指揮バーゼル室内管弦楽団が演奏したハイドンの交響曲第3番を聴いたりしながら、仕事関係の作業を進めたり、『ほそゆき』の十を書き終えてブログ等にアップしたり、『山本直純と小澤征爾』を読み進めたりする。
 『上沼恵美子のこころ晴天』では、上沼さんの「小芝居」に思わず笑ってしまった。
 あと、ソヒエフという指揮者はスケールの大きな音楽づくりを得意にしているように思うが、時としてそれがある種の鈍さに繋がっているように感じられてあまり好みではない。
(もちろん、鈍さというのは雑さや粗さ、指揮者としてのコントロール能力の欠如という意味ではないけれど)
 交響曲第7番が、そうしたソヒエフの柄によく合っているように感じた。


 まもなく外出の予定。
 それじゃあ、行って来ます!
posted by figarok492na at 19:07| Comment(0) | CLACLA日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ほそゆき』のパイロット版10

☆『ほそゆき』のパイロット版10





 熱して赤茶色に変わったフライパンのグラニュー糖にバターを溶かし込んだ苑子が、そこに棗の実を入れていった。
 皮と種とを取り去った棗の実は、ちょうど半分ずつに切り分けられている。
「こうやってしっかり絡めていくの」
 苑子が木べらを動かす。
「カラメルに絡めるんですね」
 という佳穂の言葉に、苑子が小さく笑った。
「えっ、どうかしました」
「だって、カラメルに絡めるって」
「ああ」
 佳穂はようやく自分の言葉が駄洒落になっていたことに気が付いた。
「わざとじゃないんです」
「わかってるわよ。だから、面白いの」
 大きく手を横に振る佳穂を見て、苑子がまた小さく笑った。
「すいません」
「謝ることはないじゃない」
「でも。あっ、いい香り」
 カラメルと棗の実の香りが混ざり合って、佳穂の鼻腔を刺激する。
「このまま食べたいくらい」
「我慢我慢」
 苑子が木べらを再び動かしながら言う。
「焦がさないように気を付けてね」
「はい」
 佳穂は苑子から木べらを受け取ると、棗の実をゆっくりと転がした。
「そういうちょっとした手間が大事なの。ついつい忘れがちだけど」
「忘れちゃいますね、確かに」
「柔らかさが出てきたら、火を止めて」
 木べらで軽くつつくと、ちょうどよさそうな頃合いだ。佳穂はコンロを止めた。
「しばらく置いて、熱をとる。その間に、生地と型のほうを用意しましょ」
 苑子の動きには、全く無駄がない。それでいて、いや、だからここそか、少しも焦っている感じがしない。
「どうしたの」
 不思議そうな表情で、苑子が佳穂に訊く。
「いえ、苑子さんの所作が美しいので」
「何言ってるの」
 泡だて器を手にした苑子が言う。
「羨ましいです」
「どこが」
「だって、苑子さんみたいにてきぱきと動くことはできないもの」
「いつも言ってることだけど、無理してできないことをやる必要なんてないじゃない。佳穂さんは佳穂さんにあったやり方をすればいいの」
「わかってはいるんですけどね」
 佳穂はボウルの中にバターとグラニュー糖を入れた。
「ねえ、佳穂さん」
「はい」
「あなた、私の娘になってくれない」
「えっ」
 突然の苑子の言葉に、佳穂は思わず手にした卵を落としそうになった。
posted by figarok492na at 13:24| Comment(0) | 創作に関して | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする