☆少し怪しい祭り【戌】
出演:よいとな、JIJO、尾上一樹
(2018年10月8日15時の回/あとりえミノムシ)
少し○○。
なんて言われると、いやいや、本当はもっと○○なんでしょうと思ってしまう当方は、あまんじゃくが過ぎるか?
いずれにしても、『少し怪しい祭り【戌】』というネーミングに魅かれて地下鉄・鞍馬口駅(御霊神社)近くのあとりえミノムシまで足を運んだ。
ちなみに、あとりえミノムシは糸あやつり劇団みのむしの本拠地で、アトリエの中にはこれまでの公演で活躍した人形たちが端然と居並んでいた。
開演前のオープニング・アクトは、松野泉さんのミニ・ライヴ。
弾き語りミュージシャンとしても活躍されているが、こちらにとっては谷口正晃監督の『父のこころ』の現場などでお世話になった映画監督さんであり、録音スタッフさんでもある。
やさし哀しくて、ほの明るくほの暗い、そんな歌声にひとごこちつく。
で、本編は演劇ユニット・よいとなの『夜ふかしする人々』(作・演出・出演:殿井歩さん)から。
殿井さんと申芳夫さんが結成したユニットで、二人のほかに同じく濱口竜介監督の『ハッピーアワー』で共演した出村弘美さん、田辺泰信さんが客演している。
舞台は、結婚式に出席した二人の男女の繋がりそうで繋がらない会話から始まるのだけれど、ここですでに殿井さんという書き手の目の付け所というか筆運びに感心する。
が、もちろんそこは少し怪しい祭り、話はそれだけに留まらない。
途中、物語の脱臼が突如として起こるのだ。
それにすんなり(?)と対応する出村さんや申さんに、田辺さんの味わいもそうだけど、なんと言っても殿井さんの粉砕力がすごく、ついつい笑ってしまった。
そして、話は再びもとの世界に戻り…。
おかかなしさを強く感じる一篇。
演者陣は、各々の特性魅力が巧く引き出されていたのではないか。
均されることを強制されない、風通しのよさを感じた。
殿井さんの作品には、これからもぜひ接していきたい。
続いて、場面転換ののちは、JIJOさん作・出演の人形劇『アボカド劇場』。
タイトルに偽りなし。
一人の「子供」を巡ってのアボカド(女性)二人の対立が、バナナやリンゴを巻き込みながら繰り広げられていくのだが…。
一見荒唐無稽(誉め言葉)、怪しさ満載(誉め言葉)だけど、その実いろいろと感じてしまう作品でもあり、最後にはじんわりと心を動かされた。
お客さんに判断を委ねる場所もあるなど仕掛けも少なくなかったし、アボカドたち登場する人形がとても「表情豊か」だった。
JIJOさんが次の作品でどう「攻めて」くるのかが愉しみである。
場面転換、ばかりか客席の移動も行われたのちは、尾上一樹さんの構成・振付のマイム『Junction junkyV』。
人形をテーマにしたという作品で、いわゆる動的な動きもふんだんに盛り込まれていて、観飽きない。
加えて、藪本浩一郎さんのアコーディオンが尾上さんをよく支えていて、マイムに広がりを持たせていた。
ところで、尾上さんのマイムを観ていて目が覚えているというか、どこかで尾上さんの体技に接したことがあるし、何かお話したこともあるような気がしていたのだけれど、さっき調べてみてわかった。
2013年4月のC.T.T.上映会で尾上さんの『おどどど』に接していたのだった。
マイムとダンスを如何に組み合わせていくかに挑んだ作品、お客さんを愉しませたいという姿勢もよく表われていたと思うと当時のブログに感想を記しているが、今回の作品もその延長線上にあるように当方には感じられる。
終演後、殿井さん、JIJOさん、尾上さんによるアフタートークあり。
ルーティンが活用されるなどお子さん方(三連休中ということもあってけっこう来場していた)にも愉しめる内容であったけれど、それより何より日々の世事で生きにくさを感じる大人たちにとってじわじわと心にしみ込んでくるような少し怪しい、でもとても愉しい企画だった。
ああ、面白かった!!!