☆第42回座錦湯
出演:桂三実さん、桂三幸さん
(2018年8月27日19時開演/錦湯)
まだまだ暑い京この頃だが、錦湯さんは冷房完備で無問題。
常連さんやリピーターさん、ご新規さん(ふらっと立ち寄った男性三人組など)でけっこうな入りだった。
42回目となる今夜の座錦湯は、ビリートップ五人衆のうち桂三実さんの差配で、二代目支配人である桂三幸さんをゲストに迎えた。
が、前の仕事の都合で三幸さんは開演には間に合わず。
そこで、三実さんが定刻19時とともに高座に上がった。
まずは、暑さの中での仕事にまつわるエピソードをマクラで語ったのち、本題の『商売根問』に入る。
あほな男が考え出した商売というのが、どれもこれも珍妙滑稽極まるもので…。
といったおなじみの古典。
三実さんは丹念にテンポよく演じ切った。
続く二席目は、『ミュージック野菜ステーション』(?)。
あの人気歌番組『ミュージックステーション』に野菜を織り込んでみたらという趣向の短めの新作で、次から次へと繰り出されるくすぐりに、三実さんのファニーさ、おかしみがよく表れていた。
まだ三幸さんはやって来ない。
ということで、三実さんは三席目に突入した。
と、その前に、『彦八まつり』の宣伝を。
当代文枝一門の売店は今年も豚キムチを扱うことになっているが、なんとその責任者の大役にあたっているのが三実さん。
いろいろ苦労もあってと話すうち、ちょうどいないから言うけれど、三幸さんはなんやかやと用事があって、なかなか店のほうを手伝ってくれない…。
などと話し終わったところでグッドタイミング、三幸さんがやって来た。
ひと笑い起きたのち、三実さんが演じたのはこれまたおなじみ古典の『動物園』。
基礎の部分はしっかり丁寧に。
そして、そこに加えられたくすぐりもまたおかしかった。
トリは、「待ってました!」三幸さん。
久しぶりの錦湯さんになるが、そこは勝手知ったるホームグラウンド、慌てず騒がず泰然自若と三幸流儀のマクラで笑いをとる。
本題は、新作『二つの未来』のBバージョン。
ここまでの移動中に改作しあげたバージョンとのことだ。
とある会社の社員が余興に呼んだのは、落語家だったが…。
落語家あるあるもふんだんに盛り込んで、大いに笑いを生み出した。
最後は、三実さんアレンジのゲームに挑戦!
まずは、『三幸ガオガオ』から。
物を順番にとっていくと、突然番犬がガオガオと唸ってびっくりするという、黒ひげ危機一髪のバリエーションのようなゲームをもとにしたもので、番犬役に三幸さんが扮する。
見台に置かれたラムネに見立てた紙切れを一人一人がとっていくうち、目をつむった三幸さんが好き勝手に吠えるという趣向で、三実さんや女性のお客さんとともに当方も参加したが、なかなかスリリングでけっこう愉しめた。
続いては、5秒で説明。
三実さんが出す質問に、三幸さんが5秒程度でぱぱっと答えるもので、答える人の意識無意識の思考嗜好志向が即表れてしまうものである。
ある問題を当方も振られたのだが、いやあ本音が出てしまった…。
ラストは、ただいま精進中の三実さんの笛にあわせて三幸さんが『ふるさと』を歌うという歌謡ショー(?)
三実さんの笛に対して三幸さんがあれこれと突っ込みを入れるあたりにも笑ってしまった。
と、今夜も盛りだくさんな座錦湯でした。
ああ、面白かった!!
そして、毎週月曜夜は皆さんも座錦湯にぜひ!!
2018年08月27日
ニール・サイモンが亡くなった 午前中、病院へ行く(早めのCLACLA)
晴天が続く。
気温は今日も上昇し、暑さがとても厳しい。
まだまだ夏は終わらない。
皆さん、くれぐれもご自愛くださいね。
体調、今一つ。
両耳の不調も続く。
特に、左耳の調子がおかしい。
やれやれ。
アメリカ、ニューヨークを代表する劇作家のニール・サイモンが亡くなった。91歳。
喜劇性の強い作品の作り手であるとともに、ユダヤ人家族や都会に生きる人々の心の動きを丹念に描き込んだ作家でもあった。
戯曲、並びに映画、テレビドラマの脚本で名作佳作が多数。
三谷幸喜に多大なる影響を与えたことでも知られる。
なお、早川書房から戯曲集のほか、自伝の『書いては書き直し』と『第二幕』が刊行されている。
そういえば、先日NHK・FMの『バーンスタイン大解剖』で、石丸幹二か佐渡裕か片山杜秀の誰かが、「晩年のニール・サイモン」と口にしていて、あれ、まだニール・サイモンは生きているのにと思ったばかりだった。
(「晩年」という言葉を存命の方に使うこと自体は誤りではないのだろうが)
深く、深く、深く、深く黙禱。
安倍晋三の因循姑息なやり口には本当にうんざりだ。
あの石破茂が真っ当に見えてしまうほど。
なんともかとも。
いつまで続く泥濘ぞ。
記憶力、読解力、判断力を一層鍛えていかなければ。
そして、目くらましの八百長猿芝居には絶対に騙されまい。
昨夜、NHK・FMのラジオ深夜便を聴いたりしながら『喪服の似合うカサンドラ』を書き進めたり、作業を進めたりしたのち、3時過ぎに寝床に就く。
『喪服の似合うカサンドラ』は、性懲りもなく書き進めた部分をブログにアップしたりもする。
7時台に起きて8時台に外出し、かかりつけの病院へ。
血液検査用の採血を行い、処方箋をもらって四条通のスギ薬局で薬を受け取る。
ついでに銀行を回ったり、グルメシティで買い物をしたりした。
いったん帰宅後、すぐに再び外出して郵便局へ。
用件を片付ける。
帰宅後、リカルド・シャイー指揮ミラノ・スカラ・フィルが演奏した『スカラ座の序曲・前奏曲・間奏曲集』<DECCA>を聴いたりしながら、仕事関係の作業を進めたり、『喪服の似合うカサンドラ』を書き進めたり、石田千の『ヲトメノイノリ』<筑摩書房>を読み進めたりする。
午後、仕事関係の予定をすませる。
その後、アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団が演奏したロッシーニの歌劇『アルジェのイタリア女』序曲、『セビリャの理髪師』序曲、『ラ・チェネレントラ』序曲、『ウィリアム・テル』序曲、『どろぼうかささぎ』序曲<RCA>を聴いたりしながら、仕事関係の作業を進めたり、『ヲトメノイノリ』を読み進めたり、中川右介の『松竹と東宝』<光文社新書>を読み始めたりする。
しばらくしたら外出の予定。
座錦湯なり。
それじゃあ、行って来ます!
気温は今日も上昇し、暑さがとても厳しい。
まだまだ夏は終わらない。
皆さん、くれぐれもご自愛くださいね。
体調、今一つ。
両耳の不調も続く。
特に、左耳の調子がおかしい。
やれやれ。
アメリカ、ニューヨークを代表する劇作家のニール・サイモンが亡くなった。91歳。
喜劇性の強い作品の作り手であるとともに、ユダヤ人家族や都会に生きる人々の心の動きを丹念に描き込んだ作家でもあった。
戯曲、並びに映画、テレビドラマの脚本で名作佳作が多数。
三谷幸喜に多大なる影響を与えたことでも知られる。
なお、早川書房から戯曲集のほか、自伝の『書いては書き直し』と『第二幕』が刊行されている。
そういえば、先日NHK・FMの『バーンスタイン大解剖』で、石丸幹二か佐渡裕か片山杜秀の誰かが、「晩年のニール・サイモン」と口にしていて、あれ、まだニール・サイモンは生きているのにと思ったばかりだった。
(「晩年」という言葉を存命の方に使うこと自体は誤りではないのだろうが)
深く、深く、深く、深く黙禱。
安倍晋三の因循姑息なやり口には本当にうんざりだ。
あの石破茂が真っ当に見えてしまうほど。
なんともかとも。
いつまで続く泥濘ぞ。
記憶力、読解力、判断力を一層鍛えていかなければ。
そして、目くらましの八百長猿芝居には絶対に騙されまい。
昨夜、NHK・FMのラジオ深夜便を聴いたりしながら『喪服の似合うカサンドラ』を書き進めたり、作業を進めたりしたのち、3時過ぎに寝床に就く。
『喪服の似合うカサンドラ』は、性懲りもなく書き進めた部分をブログにアップしたりもする。
7時台に起きて8時台に外出し、かかりつけの病院へ。
血液検査用の採血を行い、処方箋をもらって四条通のスギ薬局で薬を受け取る。
ついでに銀行を回ったり、グルメシティで買い物をしたりした。
いったん帰宅後、すぐに再び外出して郵便局へ。
用件を片付ける。
帰宅後、リカルド・シャイー指揮ミラノ・スカラ・フィルが演奏した『スカラ座の序曲・前奏曲・間奏曲集』<DECCA>を聴いたりしながら、仕事関係の作業を進めたり、『喪服の似合うカサンドラ』を書き進めたり、石田千の『ヲトメノイノリ』<筑摩書房>を読み進めたりする。
午後、仕事関係の予定をすませる。
その後、アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団が演奏したロッシーニの歌劇『アルジェのイタリア女』序曲、『セビリャの理髪師』序曲、『ラ・チェネレントラ』序曲、『ウィリアム・テル』序曲、『どろぼうかささぎ』序曲<RCA>を聴いたりしながら、仕事関係の作業を進めたり、『ヲトメノイノリ』を読み進めたり、中川右介の『松竹と東宝』<光文社新書>を読み始めたりする。
しばらくしたら外出の予定。
座錦湯なり。
それじゃあ、行って来ます!
喪服の似合うカサンドラ(パイロット版2)
あの日、私は尾関先生と下総さんと一緒に図書室にいた。
ほかにも司書の小泉さんや図書委員のメンバーがいたはずだが、はっきりとは覚えていない。
書庫に溜まった雑誌や新聞類、古い蔵書の整理や虫干しをするのが夏休み前の終業日の決まりで、例年の如く私たちは図書室に集まっていたのだ。
作業がほぼ終わったところで、ご褒美のアイスクリームが振る舞われる。
なんの変哲もないカップ入りのバニラアイスだけれど、一汗かいたあとにはその甘さと冷たさが嬉しい。
まだ融け切らないアイスのひやっとした感触が、今も私の舌には蘇るほどだ。
「木崎、受験はどうするんだ」
一足先にアイスを食べ終えた尾関先生が言った。
「東京の私学です」
「そうか。まあ、木崎はそうだよな」
進路に関しては、二年生のときに何度も尾関先生と話をしてきた。
「ごみせんからは、国公立も受けろって言われてますけど」
三年の担任は文系コースだというのに、なぜだか数学担当の五味先生で、国公立大学を受験しろ受験しろとどうにもうるさかった。
「五味先生には五味先生のお考えがあるだろうが」
尾関先生はそこまで言うと私をじっと見て、
「最後は木崎自身が決めることだからな」
と、続けた。
私は黙って頷いた。
「下総は」
尾関先生は今度は下総さんに尋ねる。
「私は、地元の大学を受けるつもりです」
下総さんの声は小さいけれど、とても澄んでいた。
歌を歌えばきれいだろうなと私は思った。
「英文に行きたいんだよな」
「はい、できれば」
私は、下総さんがよくイギリスの作家の小説を読んでいることを知っていた。
「去年の読書感想文、あれ面白かったからな。高慢と偏見」
「いえ、そんな」
「謙遜するなって」
オースティンの『プライドと偏見』は、少し前にDVDで観た。
エリザベス役のキーラ・ナイトレイが美しかった。
「木崎のミーナの行進の感想も面白かったけどな」
尾関先生のこういうところが、好きだった。
非常にわかりやすいけど、でも、私は好きだった。
「まあ、今年の夏休みは勉強勉強で読書感想文どころじゃないだろうけどな」
「先生は夏休み、どこか行くんですか」
「そうだなあ、今年は北海道でも走ろうかと思ってるんだ。学生時代の友達が小樽に転勤になってな。島流しだからさびしいさびしいってせっつくんだよな」
私の質問に尾関先生が答えたとたん、えっと下総さんが小さく声を上げた。
私は驚いて下総さんに視線を移した。
「ごめんなさい、何もないです」
下総さんはすぐにそう返事をしたが、彼女の顔はいつもと違ってとても薄白く見えた。
ほかにも司書の小泉さんや図書委員のメンバーがいたはずだが、はっきりとは覚えていない。
書庫に溜まった雑誌や新聞類、古い蔵書の整理や虫干しをするのが夏休み前の終業日の決まりで、例年の如く私たちは図書室に集まっていたのだ。
作業がほぼ終わったところで、ご褒美のアイスクリームが振る舞われる。
なんの変哲もないカップ入りのバニラアイスだけれど、一汗かいたあとにはその甘さと冷たさが嬉しい。
まだ融け切らないアイスのひやっとした感触が、今も私の舌には蘇るほどだ。
「木崎、受験はどうするんだ」
一足先にアイスを食べ終えた尾関先生が言った。
「東京の私学です」
「そうか。まあ、木崎はそうだよな」
進路に関しては、二年生のときに何度も尾関先生と話をしてきた。
「ごみせんからは、国公立も受けろって言われてますけど」
三年の担任は文系コースだというのに、なぜだか数学担当の五味先生で、国公立大学を受験しろ受験しろとどうにもうるさかった。
「五味先生には五味先生のお考えがあるだろうが」
尾関先生はそこまで言うと私をじっと見て、
「最後は木崎自身が決めることだからな」
と、続けた。
私は黙って頷いた。
「下総は」
尾関先生は今度は下総さんに尋ねる。
「私は、地元の大学を受けるつもりです」
下総さんの声は小さいけれど、とても澄んでいた。
歌を歌えばきれいだろうなと私は思った。
「英文に行きたいんだよな」
「はい、できれば」
私は、下総さんがよくイギリスの作家の小説を読んでいることを知っていた。
「去年の読書感想文、あれ面白かったからな。高慢と偏見」
「いえ、そんな」
「謙遜するなって」
オースティンの『プライドと偏見』は、少し前にDVDで観た。
エリザベス役のキーラ・ナイトレイが美しかった。
「木崎のミーナの行進の感想も面白かったけどな」
尾関先生のこういうところが、好きだった。
非常にわかりやすいけど、でも、私は好きだった。
「まあ、今年の夏休みは勉強勉強で読書感想文どころじゃないだろうけどな」
「先生は夏休み、どこか行くんですか」
「そうだなあ、今年は北海道でも走ろうかと思ってるんだ。学生時代の友達が小樽に転勤になってな。島流しだからさびしいさびしいってせっつくんだよな」
私の質問に尾関先生が答えたとたん、えっと下総さんが小さく声を上げた。
私は驚いて下総さんに視線を移した。
「ごめんなさい、何もないです」
下総さんはすぐにそう返事をしたが、彼女の顔はいつもと違ってとても薄白く見えた。