☆ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽
〜ピアノ三重奏の夕べ ラフマニノフ、ブラームス、シューマン〜
座席:1階8列6番→同列3番(ブラームス〜)
(2017年3月17日19時開演/京都コンサートホール小ホール)
舞台上、ライトが演奏者を中心にして楕円形の明かりを照らしている。
その光景が、「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」と題された今夜のコンサートを象徴しているように僕には感じられた。
枠の外へと踏み出すことはないけれど、枠の中で自らの持てるものをしっかり出し尽くしたというか。
〜ピアノ三重奏の夕べ ラフマニノフ、ブラームス、シューマン〜と副題が付された「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」は、ベルリン・フィルのコンサートマスターのアンドレアス・ブーシャッツに首席チェロ奏者のオラフ・マニンガーと、ベルリンを拠点に活動するピアニストのオハッド・ベン=アリが加わったピアノ・トリオのコンサートで、ラフマニノフのピアノ3重奏曲第1番「悲しみの三重奏曲」、ブラームスのピアノ3重奏曲第1番、シューマンのピアノ3重奏曲第1番という意欲的なプログラム。
もともと東京・春・音楽祭の企画が京都でも開かれたものだ。
ブーシャッツとマニンガー、ベン=アリのトリオは、あえて役者で喩えれば、中村勘三郎と藤山直美、柄本明の三人がわかった上で芸の競い合いを重ねるような名人上手の集まりでもなく、かといってインティメートな演技を重ねる昔馴染みの劇団員同志の公演とも異なる、ベルーフ(職責)の意識を強く持ったアンサンブルとでも呼べるのではなかろうか。
精度が高く、均整のとれたアンサンブル。
ではあるが、技術偏重の機械的な演奏とは一線も二線も画していることは言うまでもない。
例えば、ブラームスの第2楽章のスケルツォ アレグロ・モルトなど、ベン=アリのピアノをはじめ、音楽の構成ばかりでなくその背景にあるものが透けて見えるかのような演奏でほれぼれとした。
また、同じブラームスの第1楽章やシューマンの終楽章などでの熱の入った激しい表現も見事だし、ラフマニノフを筆頭にブラームス、シューマンの緩徐楽章でのリリカルで艶やかな音色も実に魅力的である。
そして、そうした諸々が表面的ではなく、より内面から均されている感じが冒頭の枠の内外の感想に繋がり、さらには彼らが所属するベルリン・フィルを想起させもした。
まさしく「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」だと痛感した次第である。
いずれにしても、音楽を聴く愉しみに満ち満ちたコンサートでした。
ああ、面白かった!!!