どんよりとしたお天気の一日。
気温は少し下がったか。
肌寒さを感じるほどでもないが。
皆さん、くれぐれもご自愛くださいね。
花粉はまだまだ飛散しているようで、くしゃみの連発に悩まされる。
そして、両耳の不調が続く。
やれやれ。
地震禍が続いている。
被災地の人たちのことを想う。
そんな中でも、目くらましの八百長猿芝居が蔓延している。
騙されてはなるまい。
昨夜、24時半過ぎに寝床に就いて、7時に起きる。
午前中、ジョン・エリオット・ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティーク他が演奏したベートーヴェンの交響曲第5番&第6番「田園」、第7番&第8番、第9番「合唱付き」<ARCHIV>を聴いたりしながら、仕事関係の作業を進めたり、『犬神家の末裔』を書き進めたりする。
『犬神家の末裔』はどれだけ文章を書きためられるかという試みでもあって、一応明日と明後日の分の下書きをすませておいた。
正午過ぎ、『犬神家の末裔』の昨日の下書き分を第17回として投稿する。
午後、ピアノのユンディ・リと小澤征爾指揮ベルリン・フィルが演奏したプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番&ラヴェルのピアノ協奏曲<ドイツ・グラモフォン>、ロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルが演奏したラヴェルのスペイン狂詩曲、ラ・ヴァルス、ボレロ<RCA>、ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウィーン・フィルが演奏した『ポピュラー・コンサート』<タワーレコード/DECCA>、ガーディナー指揮によるベートーヴェンの交響曲第1番&第2番、第3番「英雄」を聴いたりしながら、仕事関係の作業を進めたり、金子薫の『鳥打ちも夜更けには』<河出書房新社>を読み始めたりする。
ここのところベートーヴェンの交響曲を繰り返し聴いているが、こうやって全曲まとめて聴くと、「不滅の九つ」という呼び方ももっともな、非常に見事な出来栄えのラインナップだと改めて思う。
まもなく外出して、錦湯さんへ。
27回目となるネオ落語・セントラルなり。
それじゃあ、行って来ます!
2016年04月18日
犬神家の末裔 第17回
*犬神家の末裔 第17回
「あら、瑞希ちゃんは反抗期ね」
「そんなことは、ないです」
瑞希は不機嫌そうな表情でそう応えると、美穂子の土産物だという博多の明太子を一切れごはんにのせた。
「信光はおじゃけもんだから」
睦美が沢庵を齧った。
「おじゃけもんてなんね」
「お調子もんのこと、那須の言葉」
「へえ」
「ぼく、おじゃけもんじゃないよおー」
信光が口をぷうと膨らませて言った。
「嘘つけ、昨日だって」
「ああ、あいは面白かったね。石坂浩二も目ば丸うしとったもんね」
と、美穂子が口にするや否や信光は突然立ち上がって両手を大きく振りながら、キクチャカキクチャカミキクチャカ、キクチャカキクチャカミキクチャカ、あわせてキクチャカムキクチャカ、と踊り念仏のような動きをしてみせた。
最近流行りのHANPENという関西の漫才コンビの人気ギャグだった。
「馬鹿」
と、瑞希が軽く頭を叩いたので、あいたたたあと信光は大げさに頭を抱えた。
「信光君、それやったの」
「はい、やりました」
「ほんと、おじゃけもんなんだから」
「信光君は芸人さんにでもなっとね」
「なれないよ」
聞こえるか聞こえないかの大きさで、瑞希が呟いた。
「石坂浩二は老けたね。昔はもっとスマートだったのに」
「誰だって年をとったら太るか痩せるかするの。ばあちゃんは特別」
「身体のことじゃないよ、心のことだよ」
小枝子は、ごちそうさまでした、と両手を合わせた。
「ばあちゃん、もういらないの」
「あとでカステラよばれるからね」
「カステラカステラ」
信光が繰り返す。
「あんたは、早くごはんを食べなさい」
「はああい」
「うっさい」
瑞希が呟く。
「よかねえ、みんなでごはんば食ぶっとは。昨日は姉さんと二人だけやったけんね」
美穂子が緑茶を口に含んだ。
「早百合ちゃん、しばらくこっちにいるんだよね」
「うん。週末に一度東京に戻らなきゃいけないんだけど。しばらくこっちにいようかなと思って。和俊おじさんもそのほうがいいって言うし」
「早百合さん、こっちで小説書くの」
「たぶんね」
ふうんと瑞希は頷くと、ごちそうさまと言って立ち上がった。
「カステラは」
「いらない」
瑞希は、自分の食器類を手にしてキッチンのほうへ向かって行った。
「あの子ね、早百合ちゃんのファンみたい」
「本当に」
「うん、贈ってもらった本、熱心に読んでるもん」
「そうなんだ」
「瑞希ちゃんもすごかね、あたしはこん子の書くもんは難し過ぎていっちょんわからんとに」
「きっと、そういうものに憧れる年ごろなんですよ」
「そがんですか」
美穂子の言葉に、小枝子は黙って微笑んだ。
早百合はふと、小枝子の若い頃のことを想像した。
「あら、瑞希ちゃんは反抗期ね」
「そんなことは、ないです」
瑞希は不機嫌そうな表情でそう応えると、美穂子の土産物だという博多の明太子を一切れごはんにのせた。
「信光はおじゃけもんだから」
睦美が沢庵を齧った。
「おじゃけもんてなんね」
「お調子もんのこと、那須の言葉」
「へえ」
「ぼく、おじゃけもんじゃないよおー」
信光が口をぷうと膨らませて言った。
「嘘つけ、昨日だって」
「ああ、あいは面白かったね。石坂浩二も目ば丸うしとったもんね」
と、美穂子が口にするや否や信光は突然立ち上がって両手を大きく振りながら、キクチャカキクチャカミキクチャカ、キクチャカキクチャカミキクチャカ、あわせてキクチャカムキクチャカ、と踊り念仏のような動きをしてみせた。
最近流行りのHANPENという関西の漫才コンビの人気ギャグだった。
「馬鹿」
と、瑞希が軽く頭を叩いたので、あいたたたあと信光は大げさに頭を抱えた。
「信光君、それやったの」
「はい、やりました」
「ほんと、おじゃけもんなんだから」
「信光君は芸人さんにでもなっとね」
「なれないよ」
聞こえるか聞こえないかの大きさで、瑞希が呟いた。
「石坂浩二は老けたね。昔はもっとスマートだったのに」
「誰だって年をとったら太るか痩せるかするの。ばあちゃんは特別」
「身体のことじゃないよ、心のことだよ」
小枝子は、ごちそうさまでした、と両手を合わせた。
「ばあちゃん、もういらないの」
「あとでカステラよばれるからね」
「カステラカステラ」
信光が繰り返す。
「あんたは、早くごはんを食べなさい」
「はああい」
「うっさい」
瑞希が呟く。
「よかねえ、みんなでごはんば食ぶっとは。昨日は姉さんと二人だけやったけんね」
美穂子が緑茶を口に含んだ。
「早百合ちゃん、しばらくこっちにいるんだよね」
「うん。週末に一度東京に戻らなきゃいけないんだけど。しばらくこっちにいようかなと思って。和俊おじさんもそのほうがいいって言うし」
「早百合さん、こっちで小説書くの」
「たぶんね」
ふうんと瑞希は頷くと、ごちそうさまと言って立ち上がった。
「カステラは」
「いらない」
瑞希は、自分の食器類を手にしてキッチンのほうへ向かって行った。
「あの子ね、早百合ちゃんのファンみたい」
「本当に」
「うん、贈ってもらった本、熱心に読んでるもん」
「そうなんだ」
「瑞希ちゃんもすごかね、あたしはこん子の書くもんは難し過ぎていっちょんわからんとに」
「きっと、そういうものに憧れる年ごろなんですよ」
「そがんですか」
美穂子の言葉に、小枝子は黙って微笑んだ。
早百合はふと、小枝子の若い頃のことを想像した。